富士屋ホテル突入記
箱根の「富士屋ホテル」に泊まる機会がありました。
言わずもがなクラシックホテルの代表格のホテルですね。
明治11年開業で、今年で130周年だそうです。
場所は、箱根湯本から登山鉄道に乗り「宮ノ下」という駅を降りて徒歩7、8分のところにあります。国道1号線沿い。
一瞬、そういうアミューズメント施設かと思うくらいの雰囲気ある建物です。
エントランスには「登録有形文化財」なんてプレートが付けられてます。
ありがたやありがたや。
中に足を進め、目の前の階段を上ると、なんか不思議な空間が広がります。
ラウンジとでもいうのでしょうか。
竜みたいな装飾がほどこしてありつつ、リゾートみたいな椅子が並んでたり、なんとなく、地方の健康ランドの一角を想起させなくもありません。
しかもすぐ脇にオバチャンブティックみたいのもあったり。
さらに進むと、
今度は一変して格式ありそうな受付があり、クラシックなソファーなどが点在しています。
やはりさっきの一角が異質であったと再認識しながらも、
ふと気づくと、またしても別の玄関っぽいところがあります。
あれ?さっきのは?
回転扉を通って、改めて眺めてみると、さっきのエントランスよりさらに旧時代の雰囲気を残す装飾が施されています。
こちらがかつてのメインだったのかもしれません。
なんとなく伝わっているかと思われますが、この富士屋ホテルというところ、本当に困惑させるようなところです。
ゴッチャゴチャと言ってしまっていいのか躊躇しますが、
和なのか、洋なのか、はたまた中なのか、なんとなくこの世の装飾様式みたいなものをすべて集結させたというような印象なのです。
これがこのホテルの『味』なのでしょう。
誤解を恐れずにいうと、桂小枝の紹介する「パラダイス」とかとも重なる部分があったりします。
途中感じるのですが、
富士屋ホテルの従業員たちは実によく挨拶をしてきます。
室内ですが、
「OH、クラシック!」て感じです。
泊まる部屋は本館と呼ばれる明治24年に建てられたところですから、当たり前に「古い」です。
インパクトあるのは天井の高さですね。
それとは反対に、妙にドアノブの位置が低いのも印象的です。
しかも部屋の鍵はあくまで開けるためだけで、ドア鍵を閉める際はノブの裏のボタンを押して閉めるという「便所ノブスタイル」なのです。
また、室内には気になる「開かずの扉」がありました。
ノブもありませんし、扉の枠のところは何かパテ埋めみたいにされています。前に物も置いてあります。
つまり開ける予定のない状態です。
おそらく、かつては今でいうスイートのように数部屋に渡って提供されていたものを、扉をつぶすことによって複数の部屋に分離させたのではないかと思います。
これは他の部屋でも同様でした。
ちょっと「あれ?」なのは、テレビとか冷蔵庫とかエアコンとかの近代的な設備。
こういったものはホテルとしては必需品かと思いますが、その機器のセレクトはあまりに割り切っている様子です。
なんかもっと隠すなりして雰囲気になじませても良さそうなのですが、そこらの量販店で売っている、しかも比較的安価の方のモデルをぽーんと配置してあるのです。
別の部屋でアクオスが導入されていてたのですが、テレビ台の方にはあまりに意識が回っていないのです。なんか他の台なかったんでしょうか。
こういったホテルで、その方面の雰囲気を重んじないのなら、実際何が大切なのかわからなくなりませんかね。
箱根といえば温泉でもあるわけですが、
この客室のバスルームには、蛇口をひねると『温泉』が出てくることになっています。なので「部屋風呂で温泉に入れる」ようにはなっています。
ただ、バスルーム自体がよくあるホテルのそれと同じようなものなので、雰囲気はほとんど普通のお風呂です。
不思議なもので、雰囲気が普通だと、たとえ湯が温泉であってもそれほど温泉的な気分にならなかったりします。
ちなみに、大浴場とされる風呂も別で存在しているのですが、こちらは大人3人くらいで一杯になるようなスケールのところです。ただ、こっちの方が温泉感はあるかも。
わりとお楽しみな食事ですが、
こちらはボク個人的にはかなり満足でした。
上の写真の左にあるのが、夕食で食べた「ローストビーフ」で、富士屋ホテルの名物の1つのようです。
ローストビーフに対して「焼き方」という考えを持っていなかったので、問われた時は一瞬戸惑いました。
薄いステーキみたいな感じです。
写真右の油揚げみたいのは、朝食で食べた「富士屋ホテル風フレンチトースト」。
無印のフレンチトーストも存在している中、こちら富士屋ホテル風は、パンを揚げた状態にして仕上げたものです。想像どおり揚げパン的味わいです。おいしかったのですが、パンが薄めなので油っぽさも多少感じました。
さてさて、
貴重な体験でもいえる富士屋ホテル宿泊ですが、総括すると「スタッフと食事はグッド」という感じでしょうか。
今回ボクが食べたのは「ザ・フジヤ」というフレンチ系のメインダイニングだったのですが、サービスも含め、おいしくいただきました。インテリアが「格式ある滅茶苦茶」なせいか、変に堅っ苦しさもなかった印象です。
また、ホテルのスタッフですが、上述したように愛想が徹底されている様子で、それが良い意味で都会的でなく、いわゆるホスピタリティみたいな部分での1つの正解を見るようなところもあります。
要するに気分がイイってことですね。
これは何よりのことです。
一方、施設という意味では、やはり古いものに、無理矢理近代的な快適を持ち込まないとならないので、ところどころ難しい処理をしているところも感じます。泊まる側が「天皇陛下が...」とか「チャップリンが...」とか「ジョン・レノンが...」みたいな部分に、有難味を感じつつ滞在しないと、うっかり『不便』と口にしてしまいそうです。
大浴場で会った、何度か泊まったことのある様子のオッサンの話では、
「近所のホテルに泊まって、食事だけ食べに来るのが一番。ランチでないと名物のカレーも食べられないし」ですと。
なるほど。